もう17~8年ぐらい前、桃林窯はこの土地へ引越ししてきた。
当時、うっそうとした藪の中に広がっていた土地は、
北風が吹き荒れてひたすら寒く、どんよりとした鉛色の空が広がっていた。
ここへ足を踏み入れる道など何もなく、
お地蔵さんへと続く獣道のような細い道から、
なんとか遠目で見ることができる程度、
地形も広さもさっぱりわからなかった。
でも見た瞬間、ピピッとくるものがあって、
ナンと私は瞬時に購入を決めた。
今だったら、何かと時間をかけて検討するかもしれないけれど
若かったのだろうか、決断までには10秒とかからなかった。
「ここがいい!!ゆずってください」
寒さをこらえて二人が思わず口にした言葉だった。
「恋愛もそうだよね」
「そうだな、恋愛こそ3秒かな」
恋愛の相談を受けることもある私達は、直感を大事に・・とアドバイスする。
「だいたいさ、どう思いますか?・・なんて人に相談しているうちは
やめた方がいいに決まっているよ。どうにかなるって思わない限り
原動力にはならないもの。」とナンは言う。
私も全く同意見だ。
恋愛に限らず、インスピレーションは最大の相談相手だと思う。
お金がなかったから桃林窯の設計は自分たちの手作りだった。
あの購入をきめた日の寒い印象が強すぎて、まずは家の中に温室を作ろうと、
とんでもない発想でスタートした。
家は入ってすぐに、温室がある。
南向きで窓も大きく、高台のせいでまるで宙に浮いているような
不思議な空間だ。
ここに机とオーディオを置き、冬は植物を越冬させる。
前はメダカのソラとシドも住んでいた・・。
日中は、気持ち良すぎてすぐにウトウトしてしまうのが難点だけど
あの寒さがなければ、今のこの暖かな温室はなかったのだと思っている。
キーマ
玄関先といっても、温室だからカーペット敷き。
ここを立ててくれた棟梁は、「15センチくらい段差がないと
砂が上がって、掃除が大変ですよ」・・・と言われたけれど
たいして不自由はない。
カーペットが古くなったら土足で上がれるから
便利かも・・・。
クンシランやホンコン等の観葉植物に交じって、シクラメンも。
実はこれらは全部プレゼントしていただいたものだ。
みんなすくすくと育っていますよ。
温室の向こうは、足を踏み入れることのできない山々。
持ち主もよくわからないまま放置されている。
東京じゃ考えられないかもね・・。
ここにオーディオを置いて一日中音楽と過ごしている。
下にあるバスケットはお裁縫道具。
苦手なお裁縫も、ここでだったらなんとか・・・。
音楽が好きと言ったら、お客さまがいろいろとCDを貸してくれた。
封を切ってないものばかりを持ってきて下さる。
いいのかな・・・?と思いながらも好みの曲ばかり・・・。
桃林窯のBGMは、実はこれなんです。
休みの朝はこうやって音楽をかけて、ナンと朝食を楽しむことも多い。
紅茶好きな私は、ミルクティー派だ。
濃く入れた紅茶に温めたミルクをたっぷり入れる。
でもこの紅茶、ナンが私の誕生日プレゼントしてくれたものだから
まずはプレーンで楽しむことに・・。
オッホン、コンビニのサンドイッチだけど
休日は手抜きだって許されるよね・・・・。