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『 桃林窯 器こぼれ話 』

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ロクロざんまい

窯開きの準備でここ3日間ほどずっとロクロを挽いている。
もともと「轆轤挽き」に憧れて飛び込んだ焼き物の仕事だけれど、
窯の仕事は雑用が多く、一日中ロクロの前に座っていられることはめったにない。
久しぶりに熱中していたら、独立開窯した頃のことをふと思い出してしまった・・。


30代前半の頃、僕は勤めていた会社を辞めて独立することを考え始めていた。
とはいうものの、やみくもに独立してもうまくやっていく自信は全くなくて、
何か良いきっかけはないものかと探していた。
苦肉の策で考えついたのが「流しの轆轤挽き」・・・。
小さめの製陶所に出向いてロクロの仕事をもらう、という無謀な思いつきだった。

まだ会社勤めをしていたので、有田を避けて隣県の三川内を訪ねてみることにした。
長崎県三川内町は染付磁器で有名な伝統のある町で、当時は中小の製陶所が10軒程あり、
20人~30人位の従業員を抱えていた。
事業主は先代を引き継いだばかりの若社長が多かったように思う。

作業場に突然現れた僕に、どこの若社長も戸惑っていたが、
事情を話すと喜んで仕事をくれた。
その頃の製陶所は作った傍から売れて行く、というバブル状態で、
製品はすべて型作り、専属のロクロ師は必要がなかった。
ところが、どこの製陶所でも手作りでしか作れないものや、
半端な数の注文を後回しにしていて、納品できずに頭を悩ませていた。
それは僕にうってつけの仕事で、半年や一年も棚上げしていた仕事を回してくれた。

土・日だけのアルバイトだったけれど、作業場に「轆轤挽き」が居ることが珍しいのか、
子供たちやお年寄りが代わる代わる見物にやって来る。
歩合で引き受けた仕事なので見物客はうっとうしかったが、そこは押しかけの身、
愛想よく振る舞った。

僕が会社では商品開発の仕事をしていることを知ると若社長たちはがぜん興味を示して、
器のことや型のことを、身を乗り出して色々と知りたがった。
先代を引き継いだばかりの若社長たちはクラフトマンというよりも、
経理畑の事業主という印象が強く、新商品の開発には苦労している様子だった。
食事やお酒をごちそうになりながら長話をすることも多く、
僕のアルバイトはすこぶる効率が悪かった。

それから独立するまでの一年くらい続けたアルバイトだったけれど、
どこの作業場に行っても仕事がもらえ、そして自分の居場所がある環境が心地よかった。
無茶な思い付きだったが、今では良い経験だったと思っている。
                                                ナン




窯開き用に作り始めた小鉢

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ロクロに慣れてくるとあっという間に台の上の土がなくなる。
また土こねをしてロクロに乗せる・・ そのくりかえし。

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キーマのリクエストで、花入れも作った。

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こちらはタタラ作り。
旅館からの注文で、新作料理のお披露目で11月6日に使いたいとのこと。
納期が短い注文はやり直しがきかないので出来上がるまで気が抜けない。

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<作品の紹介>

常連のお客様からの注文で作った香炉。
気に入ってもらえたようで、二つとも購入された。
出来が良かっただけに、僕としては一つは残してほしかった。

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久しぶりに作った総織部の蕎麦猪口。
薄さにこだわって厚みが3ミリ・・ 超軽量。
発色がよかったので自然光で写してみました。

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小さめの粉引きの急須。

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これも小さめで高台のあるうつわ。

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合わせて茶器セットにしてみました。
そろそろティータイムにしませんか?

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  黒髪山陶芸作家村  秋の窯開きのお知らせ

  日時)11月23日(水)~27日(日)
     10:00~17:00

  参加窯元)泥縄窯・水炎花・辻修窯・宝寿窯・ 
       陶仙房・房空路・いろえ工房・桃林窯

  秋の紅葉の中、窯から上がったばかりの焼き  
  物の数々・・・。
  遊びがてら、どうぞぜひ、お出かけください。

by my_utuwa | 2011-11-01 09:48