『 桃林窯 器こぼれ話 』

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仕事の道具

今から20年以上も昔、
クラフト系の学校を卒業した僕は、有田へ向かった。
有田でロクロをもっと習いたいと、思ったからだ。

練習に使う土は磁器用の土で、白くて滑らかだった。
考えてみれば、磁器の生産地で習うのに磁器用の土を使うのは当たり前だ。
僕は陶器と磁器の違いも深く考えずに有田へ向かってしまったのだ。

磁器用の土は曲者で、ろくろで成形しようとすると、
粘りがなく、こしも弱かった。
薄く引き伸ばすと、すぐにへたってしまう。
どうにも手に負えないと、当時の僕はつくづく後悔した。

先人も同じ苦労をしたらしく、この厄介な土を何とかうまく伸ばす工夫をした。
そこで考えられたのが、木製の「へら」だった。
形が牛の舌に似ていることから、「牛ベら」という。
修行中は牛べらを自在に使いこなす師匠の手が神業のように見えた。

今では、僕の道具の中では、一番大事なものになっている。
僕の牛べらは、県境を越えた長崎の、町はずれの床屋で作ってもらっていた。
牛ベらと床屋・・・。誰も結びつかないだろう。
僕も最初に聞いた時は、なにかの間違いではないかと思った。

でも手先の器用な、ここのおやじ、知る人ぞ知るへら作りの名人だった。
3~4年ほど前に、高齢でやめてしまってからは、
もう二度と手に入れることができなくなってしまった。
それからというもの、僕は四苦八苦しながら自分で牛べら作りをしている。
最近は、どうにか使えるのが作れるようになってきた。

おかげで自分たちの使うスプーンも、いつの間にか手作りになり、
キーマはすっかり喜んでいる、という訳だ。          ナン




これが、「牛ベら」。
四苦八苦しながら、当時作り始めたもの。
中央の大きなへらは床屋製、皿を伸ばす時に使う。
左右の自作2本は、湯飲みを作るときに使う。

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右のへらは、大皿を引くときに底の部分を締めるもの。
左は流木。知り合いの作家にもらった。
この流木、土を叩き締めたり、模様をつけるときに重宝している。

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右から、土を内側からふくらませるためのコテ。
中央、急須の口作りをするときの小さいコテ。
左、急須のふたをのせる「き」を作る時のへら。

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「しっぴき」と呼んでいる。
ろくろで成形をした後の器を切り離す時に使う。
糸は、好みの太さに縒って使う。
糸底の語源はここからきている。

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ステンレスのワイヤー、土の塊を切るためにホームセンターで買ってくるが、
極細は意外と高価だ。
扱いやすいように、木の枝にくくりつけている。

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内べらいろいろ。
以前はよく使っていたが、最近ではほとんど使わなくなった。
磁器の練習をしていた時に、よく使ったもの。
上のへらは、旧家に使われていた障子の腰板を再利用したもの。
正目の板は、100年以上の年輪があった。
今ではもう手に入らないだろう。
磁器の飯椀を作る時、このへらは抜群の働きをしてくれる。
下の2枚は市販のもの。

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刷毛目の平鉢。
以前買ってくれたお客さんが、とても使いやすいと、
片道2~3時間をかけて、わざわざ追加で注文に来てくれた。
見本を見ながら、久しぶりに作った平鉢だった。

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一尺ぐらいの大きさの、変形の大皿。
一部分を削って、インパクトのあるアクセントをつけた。
ボリュームがあって、存在感がある。
オードブル皿、チーズ皿、刺身皿などに・・。
人が大勢集まる時、こんな皿にドンと料理を盛り付けて
友達と一緒に楽しく飲む、というのはどうだろう。

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by my_utuwa | 2009-10-22 18:32 | 作陶 | Comments(12)
Commented by ワル猫です at 2009-10-22 20:11 x
タダの木じゃだめなんですね~ もちろんスプーンなんかもっての他でしょうね~

木の持つ風合いが焼き物作りにも反映するのかな~
いい道具って長く使えるものですね・・・

一尺の大皿・・・ 単位が職人さんだな~
永六輔さんも尺を復活させてほしいと言われていましたね・・・

Commented by my_utuwa at 2009-10-22 20:44
ワル猫さん、こんばんは。

1尺は30.3センチ。知らない間に身に着いた単位です。
土は焼き物になるまでに、13パーセント小さくなります。
慣れるまでは、なかなか感覚がつかめません。
陶芸教室で習ったことのある人は、そういう経験のある人が、
少なからず、いらっしゃるでしょうね。

工房では、尺も寸も大きさを表す単位として
普通に使っています。
単位が職人さん・・・という言葉が、逆にとても新鮮でした。(笑)
                                   ナン
Commented by mizzypon at 2009-10-22 23:30
わぉ!写真の数々、私のツボです。ぞくぞくします(笑)。
昔ながらの小道具って・・・使い込まれた物はそのまま何も飾らずとも
アクセサリーにしてしまいたいぐらい美しいなぁって思ったりします。

こういう道具と、ナンさんの腕と。いろんなものの可能性が調和して、
あんなすてきな器の数々が生まれているんですね~。かっこいいなぁ~。

先日はキーマさんにお世話になりました。キーマさんにお会いした日は、
何故だか麻布とかコットンを触りたくなるんです(笑)。
ほんとに、自然の素材がとてもお似合いのお二人ですよね♪ 素敵っ。
Commented by my_utuwa at 2009-10-23 09:45
おはよう mizzyponさん

窯を築ってもらった時、爺ちゃん職人さんが持っていた
ハンマーの取っ手がすげ変えてあって、
それがかっこよかったなー。
職種に限らず、職人さんの道具は美しいですね。        ナン

mizzyponさん、こんにちは。
先日は、こちらこそツボに入ってしまったプレゼントを
ありがとうございました。
近々、挑戦してみようと思っています。

また、遊びに来てくださいね。
そろそろ山が色づき始めていますよ。      キーマ
Commented by 白ばら at 2009-10-24 22:31 x
ちょっとご無沙汰してたら~♪
大工さんに転職してのかなって思いましたよっ(笑)
テーブルも手作りなんて凄いですねっ
特にパソコン置いてるテーブル・・・下さい~ (笑)
ワインの木箱で作った引き出しなんて目が点になってます
木製品って何とも温かくて大好きです
スプーンも良いな~❤

陶器を作るのにも色んな道具がいるんですねっ
里山にも木が沢山あるのに何も作れない~って悲しい・・・
Commented by tatsumy at 2009-10-25 22:29 x
ナンさん、こんばんは
関心してしまうばかりです・・・
道具っていいですよね
ものすごい価値観を感じます!
何物にも変えがたい、素敵なかたち・・・

一尺変形大皿・・・ほしい。。。。。!
いえ、これだけではないんですけどね・・・
急須も小鉢も大皿も・・・・
主人をくどいて行く、九州への旅!
いつ頃かしら・・・

いつも素敵な作品ありがとうございます!

Commented by my_utuwa at 2009-10-26 09:14
白ばらさん、おはよう!

大工に転職?
ハハハ・・・、いいですね。
僕は手仕事だったら、何でも好きです。
家だって、時間があったら自分で作りたかったくらいですから。

パソコンテーブル、気に入っていただけたんですか?
ワインの木箱の利用、実はそこからパソコンテーブル作ることを
思い立ちました。

家の中は木で作ったものがほとんどです。
キーマも僕も、硬い質感は好きではありません。

年をとったら、もっと時間に余裕ができるかも、
山でもっと遊びたいですね。          ナン
Commented by こまみち at 2009-10-26 19:03 x
┏━━━━━━━━★┃
ナンさんキーマさん(*~▽~)/ばんわぁ~♪
こーやって 手作りスプーンが出来上がったんですかー いいですねー( ´∀`)σ
作品を見る私は簡単
だけど作るナンさんは大変でしょう
白磁器いいなぁー 可愛い人形を探してるの
又もや言うのは簡単ですね(*∀*)
手の器用な方は何でも手作り 
ホント羨望の眼差しジィ~~~、、視線を感じる?(*∀*)笑               ┃★━━━━━━━━┛
Commented by トマオ at 2009-10-26 19:40 x
いろんな道具があるんですね~
ご説明をお聞きしないと使い方等、分けわかんないです(^^)
牛ベらは確かに牛の舌に似てるなぁ。
きっと先端のアールになってるところが 一番難しいんだろうなと勝手に思ってみています。

ずい分前に萩で湯のみを作った事がありますが、収縮すると聞いて
かなり大き目に作りましたが 出来上がった湯のみは丼のような重い湯のみでした。
それに厚みが均一でなかったためひび割れしているし(ーー;)
ご披露したいんですが、どこにしまったやら見つかりません(笑)
Commented by my_utuwa at 2009-10-29 17:26
tatsumyさん、こんにちは。

注文の急ぎの窯に追われていて、
返事がすっかり遅くなって、すみません。

変形一尺皿、気に入っていただけたようで、とても嬉しいです。
僕もこの作品、気にいっているものの一つです。

もうすぐ窯開き、今また、たくさんの作品ができていますよ。
時間が取れたら、ご主人と一緒にいらっしゃいませんか?
高速道路も1000円になったことだし、
この辺は、温泉もたくさんありますよ。

それから、よく問い合わせがある事なのですが、
写っている作品、現物がある場合は、お送りすることもできます。
遠方の方からは、頼まれまることもしばしばです。
その折は、いつでもおっしゃってください。

今は、新しい釉薬・土を使って新作に挑戦しています。
ワクワクする楽しい作業です。        ナン

Commented by my_utuwa at 2009-10-29 17:37
こまちゃん、こんにちは。

貧乏暇なし。何しているかわからないけど、
元気でいます。
こまちゃんからの熱い視線、もちろん感じていましたよ。
ハハハ・・・。

スプーンは出来ても、人形となると、残念ながら、
専門外ですね。
友人の作家に、人形作家がいますが、
優しい雰囲気で、とても人気がありますよ。

うちでもa doll「陶人形舎の人形たち」でリンクしているから、
ぜひ、のぞいて見てね。

寒くなってきたけど、こまちゃんはいつでも元気いっぱい。
なんか、いつもパワーをもらっています。    キーマ
Commented by my_utuwa at 2009-10-29 17:50
トマオさん、こんにちは。

牛べらは、お察しの通りアールのところが難しいです。
微妙なカーブで、使い物になるのかどうかが決まってきます。
それでも何とかやっていますけどね…。

丼のような湯呑み、もう見つからないんですか?
うちでも時々、取材などで経験のない人が
ロクロをひいたりすることがありますが、
中には、最初からうまい人もいて、こっちも見ていて楽しいですよ。

でも大半は、大きすぎたり小さすぎたり、
だけど、それも世界で一つだけ。
もし、見つかったら是非アップしてくださいね。
見てみたいなあ・・。        ナン